パウロ・コエーリョ 塩
ところが急に、塩がなくなっていることに気がついた。
そこでアハブは息子を呼んで言った-
「町に行って塩を買っておいで。でも正しい値段を払うんだぞ。
高すぎても安すぎてもいけない」
息子はそれを聞いて驚いた-
「高く払いすぎてはいけないというのはわかる。でも、少しばかり値切ることができるなら、お金を節約したほうがいいじゃないか?」
「都会ではそれがいいだろう。しかし、ここみたいな小さな町では、それが滅亡の始まりになる」
息子はそれ以上質問せずに出かけていった。
ところが、招かれていた人たちはその会話を聞いていたので、どうして塩を安く買ってはいけないのか知りたがった。
するとアハブはこう答えた-
「低下以下で塩を売る人は、その金がどうしても必要だからそうするんだろう。
そういう状況につけこむ人は、ものを生み出すために働いた人の汗と苦闘に対する敬意に欠いている」
「しかし、そんな小さなことで町が滅亡するはずはないだろう」
「この世の始まりにおいても、最初の不正は小さなものだった。
しかし、その後、次から次へと人は、大したことじゃないと考えて、少しずつ小さな不正を付け足していった。その結果、今ではどういう事にいたったか見てみればいい」
〜「悪魔とプリン嬢」より〜
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=200401000327