祈りの本
ユダヤ人であるその農家の少年は、ロシュハシャナ(ユダヤの新年)を祝うために大きな町に来た。
しかし、少年は祈りの本を持ってくるのを忘れてしまっていた。
森の中で少年は手押し車の車輪を壊してしまったので、その日一日祈りを捧げるような気にはなれなかったのだ。
少年は思った:
「僕たちは、天におられる聖なる創造主に一年を通していつでも祈りの言葉を捧げている。
特にロシュハシュナの時期の二日間はとても大事で、世界や人々の一年間がどうなるか主が判断をする時期なのだ。
しかし、僕は祈りの本を忘れてしまった」
そこで少年はこのような祈りを捧げたのだった:
「主よ、僕はとても愚かな事をしてしまいました。
僕は祈りの本を持たずに家を出てしまったのです。
しかし僕はあまり物覚えがよくないので、祈りの本に書かれている事が何一つとして復唱できません。
ですから、僕はこのような事をします:
僕はこれからアルファベットを五回ゆっくりと復唱します。
祈りの言葉を最もよく知っているあなたに、そこから祈りの言葉を組み立ててほしいのです」
それを聞いた聖なる創造主は天使達に言った。
「この少年の祈りは、今日聞いた祈りの中で間違いなく最高だ。
何故なら、それは彼の本心から出た気取りがない誠実な祈りだからである」
〜ユダヤ教に伝わる民話より